神戸地方裁判所 昭和43年(ワ)1256号 判決 1972年2月18日
原告
白石宗来こと白宗来
被告
有限会社小林運輸
ほか二名
主文
一 被告小林運輸株式会社、同本田信吾は各自原告に対し、金八二三万七四九五円及び内金五九九万七五四〇円に対する昭和四三年一〇月三日より、内金一七三万九九五五円に対する昭和四六年一一月二八日より、内金五〇万円に対する昭和四七年二月一九日より各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の右被告両名に対するその余の請求及び被告上組陸運株式会社に対する請求を各棄却する。
三 訴訟費用の内、被告小林運輸株式会社、被告本田信吾との関係で原告につき生じた費用の三分の一は原告の負担とし、その余の費用は全部右被告両名の連帯負担とし、被告上組陸運株式会社との関係で生じた費用は全部原告の負担とする。
四 この判決は、原告において主文第一項につき仮に執行することができる。
事実
第一当事者の申立
一 原告
被告らは連帯して原告に対し金一、三〇七万五八七四円及び内金一、〇二一万五六七四円に対する昭和四三年一〇月三日より、内金二八六万〇二〇〇円に対する昭和四六年一一月二八日より各完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする旨の判決並びに仮執行の宣言。
二 被告ら
原告の各請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする旨の判決。
第二原告の請求原因
一 事故の発生
1 原告は、昭和四二年一二月八日午後六時四〇分頃、足踏自転車に乗り神戸市灘区新在家南町一丁目二の一番地先国道の横断歩道上を信号に従い南より北へ横断中、東から西進してきた被告本田信吾運転の三輪貨物自動車(神戸六か三七-五一号、以下被告車という)に衝突され路上に転倒した。
2 そのため、原告は頭部外傷Ⅲ型、頭蓋底骨折、頭頂部挫創、前額挫創、口唇挫創、両側眼底出血、右前腕骨粉砕骨折、右上腕部挫傷等の傷害を受け、事故日より引続き入院治療中であるが、現在は外傷による痴呆症となり廃人同様の常態にある。
二 被告らの責任
1 被告小林運輸株式会社(以下小林運輸と略称する)は、被告車を所有し、本件事故の際これを自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法第三条により、本件事故による原告の損害(人損)を賠償する責任がある。
2 被告上組陸運株式会社(以下上組陸運と略称する)は、被告小林運輸に対して常に貨物の運送を委託し、事実上親会社子会社の関係にあり、しかも被告小林運輸に対して被告車に「上組陸運株式会社」の名称を掲げることを許し、事実上被告車の運行を支配していたのであるから、被告上組陸運も被告車を自己のために運行の用に供していた者として、自賠法第三条により前同様の賠償責任がある。
3 被告本田は、被告小林運輸の取締役であるが、事故の際被告車を運転して東方より本件の交差点に差しかかつたところ、東西の交通信号は赤を示していたのであるから、横断歩道の手前で一旦停車しなければならないのに、これを無視して交差点に進入した重大な過失により本件事故を発生させたものであるから、民法第七〇九条により本件事故による原告の損害を賠償すべき責任がある。
三 原告の損害
1 喪失利益 四七一万五六七四円
原告は、本件事故の当時年令五九才であつたが、山瀬建設工業株式会社に勤務し、年額にして金七一万五六八九円の給与を受けており、もし本件事故にあわなかつたならば向う七、九年にわたり、右金額を下らない賃金収入を得ることができたのであるが、本件事故の結果労働能力を全く喪失し、一生涯回復する見込みがないので、原告は右収入割合による得べかりし利益を失うに至つた。右の損害額を事故時に一時払を受けるものとしてホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除してその現価を求めると金四七一万五六七四円(715,689×係数×6.589)となる。
2 付添看護料 二八六万〇二〇〇円
原告は、本件事故による傷害のため前記のとおり廃人同様の体となり、生涯付添看護を必要とするところ、昭和四六年一一月二七日現在の年令は六三才であるから簡易生命表に示された平均余命に照らし以後少くとも一〇年間は生存する。そして右の付添看護料は最少限度一か月金三万円を要するから、右期間中に要する付添看護料は計三六〇万円を右起算日に一時払を受けるものとしてホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除してその現価を求めると金二八六万〇二〇〇円(30,000×12×7.945)となる。
3 慰藉料 五〇〇万円
原告は、本件事故により前記一2のような頻死の重傷を受け、生命は取り止めたものの、長期の入院生活を余儀なくされ、また右前腕骨折につき骨移植の手術を受けたが機能障害が残つており、さらに頭部外傷による痴呆症が現れ一生涯治癒する見込みがない。そのために原告が受け、また将来受けるべき精神的、肉体的苦痛は甚大であるから、その慰藉料は金五〇〇万円が相当である。
4 弁護士費用 五〇万円
被告らは、本件事故による原告の損害を賠償しないので、やむを得ず弁護士に委任して本訴を提起した。そのため原告は金五〇万円の弁護士費用を負担しなければならない。
四 請求額
よつて、被告ら各自に対し以上の損害額合計一三〇七万五八七四円及び内金一〇二一万五六七四円に対する昭和四三年一〇月三日(訴状送達の翌日)より、内金二八六万〇二〇〇円(付添看護料)に対する昭和四六年一一月二八日より各完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める
第三被告らの認否及び抗弁
一 被告小林運輸及び被告本田
1 認否
請求原因一、1の事実及び同二、1の責任事由は認める。その他の請求原因事実はすべて争う。
2 抗弁
(一) 被告本田は信号(東西青)に従つて交差点に進入したのであり、本件事故は原告が信号を無視して横断したことにより発生したものである。従つて被告本田には運転上の過失がなく、かつ被告車に構造上の欠陥又は機能の障害はなかつたから、被告小林運輸には責任がない。
(二) 仮に、被告本田に何らかの過失が認められるとしても、原告にも信号無視の過失があるから、賠償額の算定上原告の右過失を斟酌すべきである。
(三) 被告小林運輸は、原告の申請により発せられた神戸地方裁判所昭和四四年(三)第七二七号及び昭和四五年(ヨ)第六八三号事件の各仮処分命令に従つて、原告に対して、昭和四四年一〇月三〇日に金四〇万円、昭和四四年一〇月一日以降昭和四六年九月末日までの間に毎月六万円宛、以上合計一八四万円の支払をしたから、原告の損害額より控除されるべきである。
二 被告上組陸運
1 認否
請求原因二、2の事実中、被告車に「上組陸運株式会社」の名称が記載されていた事実のみを認め、その他の事実は否認する。被告車における右の記載は被告小林運輸が勝手に記載していたものであつて、被告上組陸運がこれを許諾したのではない。
また被告上組陸運は受託貨物が多くて自社の車両で運び切れない場合に、貨物名、送荷先、運賃を定めて被告小林運輸に運送の委託をしていたに止り、この場合においても配車の指示、運行管理はすべて小林運輸が行つていたものである。しかもその委託量は三割程度であつて決して専属的に輸送させていたものではなく、もとより親会社子会社の如き従属関係はない。従つて被告上組陸運が被告車の運行を支配した事実は全くない。さらに、本件事故の際被告車に積まれてあつた貨物は被告上組陸運が委託した貨物ではないのであるから、いずれの点からみても運行上の責任はない。
その余の請求原因事実については全部不知。
2 仮定抗弁
被告小林運輸の抗弁(一)(二)(三)を引用する。
第四抵弁に対する原告の認否
被告らの抗弁(一)、(二)は否認する。抗弁(三)のとおり被告小林運輸より仮処分命令の履行として主張額の支払を受けたことは認めるが、しかし右は仮の支払いであつて、その本案にあたる本件の給付判決が確定するまでは弁済の効力を生じないのであるから、請求額より控除することは許されないものである。
第五証拠関係〔略〕
理由
一 事故の発生
請求原因一、1記載の事故発生事実は当事者間に争いがない。
そこで原告が右事故により受けた傷害の部位程度及び治療経過につき考察するに、〔証拠略〕によれば、原告は右事故により頭部外傷Ⅲ型、頭蓋底骨折(右)、頭頂部挫傷、前額及び口唇挫創、右前腕骨粉砕骨折、両側眼底出血、右上腕部挫傷等の傷害を受け、事故日から昭和四四年一一月末まで金沢灘病院にて、その後約一カ月間神戸日赤病院にて各入院治療を受け、昭和四五年一月以後は自宅療養を続け医師福岡昭吉の診療を受けているのであるが、事故後約五〇日間は高度の意識障害が続き、また右前腕骨骨折についてはギブス固定が施されていたが仮骨形成状態が悪く癒合しないため昭和四三年五月八日骨の移植手術がなされ、引続き長期間にわたるギブス固定を受けたこと、金沢灘病院入院中の昭和四三年九月一八日突然に右半身の運動麻痺と失語症が発現し、以来現在に至るまで軽快せず、さらに外傷による痴呆と認むべき中程度の精神障害が発生し、歩行は可能であるがその他の自主的な日常動作が不可能であるため、他の者の介添えを必要とし、右の状態は生涯回復する見込がないこと、以上の事実が認められ、反証はない。
二 被告らの責任
1 被告本田の責任
〔証拠略〕を綜合すると、本件の事故現場は東西に通ずる国道四三号線(第二阪神国道)上の横断歩道(幅六米)及び信号機の設けられてある場所であるが、信号機は手押ボタン式のものであつて横断者用信号機の信号周期は青信号一一秒、青の点滅信号四秒、黄信号四秒であること、原告は自転車に乗り右の横断歩道を南から北へ渡る途中西行車道の西端から約五米八〇糎北へ進んだ地点(西行車道の中央より少し北へ寄つた地点)において被告車と衝突したこと、原告よりも先に信号用のボタンを押し南北の青信号に従つて横断していた者があつたため、右衝突の時点では南北の信号は青の点滅信号となつていたと考えられること、被告本田は被告車を運転し時速約六〇粁の速度で東から西進し右横断歩道の手前約一五米(衝突地点の東方一七米六五糎)の地点に到つたとき、横断中の原告を認め急制動の措置をとつたが時既におそく前記の地点で原告に衝突したこと、以上の事実が認められ、これらの事実によれば、本件事故は被告本田が事故現場の対面信号(赤色)に対する注視を怠つたか或は横断歩道に達するまでに青色の信号に変るものと考え見込み運転をしたかにより、結局東西の信号が赤色の信号(止れ)であるのに横断歩道の手前で一時停止をすることなく横断歩道内に進入した過失により惹起されたものと認むべきであり、〔証拠略〕は前に掲げた証拠に照らし採用することができない。よつて同被告は民法第七〇九条により本件事故のため原告の受けた損害を賠償する義務がある。
2 被告小林運輸の責任
被告小林運輸が被告車を所有し、本件事故の際これを自己のために運行の用に供していたことは当事者間に争いがなく、同被告主張の無過失の抗弁は右1の認定に照らして認容しがたいので、同被告は自賠法第三条により本件事故による原告の損害(人損)を賠償する義務がある。
3 被告上組陸運の責任
被告車の車体に被告上組陸運の名称が記載されていたことは当事者間に争いがない。しかしながら〔証拠略〕を合わせると、被告小林運輸は昭和四〇年一二月二五日会社組織に改めると共に自動車運送事業の免許を得たものであること、それ以前の個人営業当時には被告上組陸運の専属的輸送部門として同会社の名称を用いて輸送を担当していたのであるが、右のとおり会社として運送事業の免許を得て以後は右の専属関係を離れ、独立の営業体として事業の運営、自動車の運行管理を行い、被告上組陸運の支配力は及んでいなかつたこと、しかし被告小林運輸の全取扱貨物の三割程度は被告上組陸運の受託貨物を同被告の送状により輸送していたので、この種貨物を倉庫業者などから受領する場合、又は荷受先に配達する際における便宜上所有車両七台の内の四台の車体に上組陸運の名称を掲げていたのであるが、被告上組陸運の右のような委託貨物についても運送料を受領しており、車両の所有物は勿論のこと燃料その他の諸経費は一切被告小林運輸が負担していたこと、本件事故の際に被告車に積んでいた貨物は被告小林運輸が訴外昭和工業より直接輸送を委託された貨物であつて被告上組陸運とは全く無関係な輸送であつたこと、以上の事実が認められる。そして右の事実関係のもとでは、本件事故の際における被告車の運行につき被告上組陸運が運行支配をもち、又は運行利益を収めていたものとは認めがたく、他に同被告が本件被告車の運行につき自賠法第三条の運行供用者に当ることを認めるに足りる証拠はない。よつて、被告上組陸運に対する原告の請求は理由がない。
三 原告の損害
1 喪失利益 二九九万七、五四〇円
〔証拠略〕を合わせ考えると、原告は本件事故の三年位前から山瀬建設工業株式会社(神戸市灘区船寺通五丁目神戸製鋼所内)にロール整備工として勤務し、本件事故当時の平均手取収入額は一日一、四〇四円(480,000÷342)、年額にして五一万二、四六〇円(1,404×365)の手取収入を得ていたところ、本件事故により前認定の傷害を受け以後一切の収入を失い、かつ労働能力を喪失した結果将来も労務に就くことができないこと、右会社では雇用者に対する年令制限がなく健康で就労が可能であるかぎり雇用される定めであること、原告の仕事はロールの解体、整備、組立であつて力を要する仕事ではあるが重労働には当らないこと、原告は本件事故の当時満五九才(明治四一年一一月二七日生)であつたが健康体であつたから可能なかぎり引続き右会社に勤務する意思であつたこと、右勤務会社には昭和四六年六月現在において六四才頃まではロール整備工をなし、その後は仕上工として勤務している六八才の工員がいること、以上の事実が認められるので、原告はもし本件の事故にあわなかつたならば少くとも満六五才に達するまでの向う六年間は引続き前記会社に勤務し前記の収入を下らない収入をあげ得たものと推認するのが相当である。(もつとも高令化に従い基準賃金が低下することも予想されるが、一面一般的に恒常化した物価上昇によるベースアツプも考えなければならない。)
そうすると、原告は昭和四二年一二月九日(事故日)から昭和四六年一二月八日までの四年間に前記収入割合による計二〇四万九、八四〇円の得べかりし賃金収入を失い、さらにその以後満六五才に達する昭和四八年一一月二六日までの間に前記収入割合による得べかりし賃金収入を失うものというべきところ、これを昭和四六年一二月八日に一時払を受けるものとしてホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除すると金九四万七、七〇〇円(月額42,120円×ホフマン月係数22.5)となるので、原告の喪失利益の合計額は金二九九万七、五四〇円と認むべきである。
2 付添看護料 一七三万九、九五五円
前記一認定の原告の病状に証人趙五順(原告の妻)の証言を合わせると、原告は半身麻痺と痴呆症のため自ら食事を摂ることや用便を達することができず、かつ右症状の回復は望めないので生涯にわたる付添看護を必要とすることが認められるので、そのために要する付添人の労働対価は原告が本件事故により受ける損害として加害者側で賠償しなければならないものというべきところ、第一二回生命表によれば五九才の男子の平均余命は一五・九二年であるから、原告は右平均余命にあたる約七五才まで生存するものと認むべきであるが、末期において事故とは関係のない老衰のために付添看護を必要とする期間も考慮しなければならないので、原告につき本件事故による傷害の結果として付添看護を必要とするものと認むべき相当期間は原告主張のとおり満七三才に達するまでの期間とみるのが相当である。
しかしながら、原告の前記症状に照らすと原告の付添看護は終日間断なく継続しなければならないという程のものではないこと及び原告の右看護は妻である趙五順が当るものと推認されるところ妻が付添看護をする場合には夫婦共同生活体としての協力関係も考慮しなければならないので、原告の右症状に対する付添看護の対価は一日六〇〇円と算定するのが相当であると考える。
よつて原告に要する右割合による原告主張の一〇年分の付添看護費を原告主張の起算日(昭和四六年一一月二七日)に一時払を受けるものとしてホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除してその現価を求めると金一七三万九、九五五円(600×365×7.945)となる。
3 慰藉料 三〇〇万円
原告が本件事故のため受けた前認定の傷害の部位程度とその治療経過及び推定余命年間にわたり存続すると認むべき後遺症を合わせ考えると、そのために原告が受け、また将来にわたり受けるべき精神的、肉体的苦痛に対する慰藉料は金三〇〇万円と算定するのが相当である。
四 被告らの抗弁
1 被告らは、原告の過失を主張するので考察するに、理由二ノ認定の事故発生経緯に照らすと、原告が事故現場の横断歩道に進入を開始した時点は青の点滅信号が始まる一、二秒前であつたと認められるので、北へ渡りきるまでに要する時間を考えると横断開始に無理があつたといえないではないが、しかし本件の事故は横断開始後間のない西行車道の中央付近で発生しており、事故発生時点における南北の信号は青の点滅、東西の信号は赤であつたと認めざるを得ないので、本件事故は被告本田が信号に従い一時停止ないしは減速徐行をなすべき注意義務を守らなかつた結果発生したものというべく、本件の事故発生につき原告に過失があつたものとはたやすく認めがたい。よつて過失相殺の被告らの抗弁は認容することができない。
2 被告小林運輸が、事実摘示第三、一、2(三)のとおり、仮処分命令に従つて原告に対し被告ら主張の金額を支払つたことは当事者間に争いがないけれども、仮処分命令により支払われた金銭はその給付を命ずる本案判決が確定することにより当然に本執行に移行し、同時に当該判決において命じた給付額がその支払額の限度で填補され消滅するものと解すべきである。従つて口頭弁論の終結時を基礎とする本案判決において、仮処分命令による支払額を認容の債権金額から予め控除することはできないものというべきである。もつとも斯様に解すると判決確定と同時に消滅すべき金額についても形式上債務名義を与えることになり、債務者において二重執行の危険に晒されるおそれがないとはいえないけれども、判決の確定を条件とする減額判決をすること又は執行文付与の段階で執行力を制限することは法律上困難であると解されるので、万一債権者において右の二重執行に及んだ場合には(債権者において右の支払額を控除した残額について強制執行の請求をするのが当然であるけれども)債務者より請求異議の訴を提起して執行力の排除を求めるの外ないものと解する。
五 弁護士費用
原告が弁護士に委任して本訴を提起したことは、その権利擁護のため必要やむを得ないものと認められるので、原告の負担すべき弁護士費用(手数料、報酬)の相当額は、原告が本件事故により受けた損害として被告本田及び被告小林運輸において賠償しなければならないところ、右の相当額は、本件事案の性質内容、賠償認定額及び日本弁護士連合会所定の報酬等の基準に照らし、原告の請求額である金五〇万円を下らないものと認める。
六 結び
よつて、被告本田及び被告小林運輸は各自原告に対して、前記三、1 2 3の損害額と前記五の弁護士費用との合計額金八二三万七、四九五円及び内金五九九万七、五四〇円(喪失利益と慰藉料)に対する昭和四三年一〇月三日(訴状送達の翌日)により、内金一七三万九、九五五円(付添費)に対する昭和四六年一一月二八日より、内金五〇万円(弁護士費用)に対する昭和四七年二月一九日(判決日の翌日)より各完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるものと認め、原告の請求を右の限度で認容し、右被告両名に対するその余の請求及び被告上組陸運に対する請求はいずれも理由を欠くものと認め棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行につき同法第一九六条第一項を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 原田久太郎)